ジョージ・タケイさんは、2009年12月11日(金)から2010年1月3日(日)まで、イギリス ケント州チャタム(Chatham)の劇場『The Central Theatre』にて上演されるパントマイム劇『アラジン(Aladdin)』に、出演されました。これは、12月21日(月)に、私がこの舞台を観た際のレポートです。
とても楽しい舞台で、お伝えしたいことが多々あるのですが、ジョージ・タケイさんに関することに絞って、お伝えしたいと思います。一部私の記憶違いと、英語の理解力の問題で、異なる箇所もあるかと思いますが、どうぞご了承下さい。
チャタムの街は、ロンドンから鉄道に乗って約1時間の街です。数日前から降り積もった雪の影響からか、ロンドンからの列車が次々にキャンセルになり、一時はたどり着けるかどうか危ぶまれましたが、無事公演の1時間前に、ブラッド・オルトマンさんと劇場で会うことができました。
とてもラッキーなことに、今回私はオルトマンさんと共に、舞台を楽しむことができました。オルトマンさんは、11月下旬にタケイさんと共に渡英されて、リハーサルの様子はご覧なられてたのですが、公演が始まる前に一旦帰国。2日ほど前に、再びこちらに戻らたそうです。ですから、完成された劇を観客席からご覧になられるのは、今回が初めてとのことでした。
平日にもかかわらず、観客席は親子連れでほぼ満席状態。開幕と共に、観客は手拍子で早くもノリノリ、舞台からの掛け声にも、一斉に応えます。ちなみに「Oh, yes it is」、「Oh, no it's not」や、「It's behind you!」は、お決まりのやり取りのようです。さらに子供たちは、手にしたカラフルなスティック・ライトを振りまわし、叫び声をあげて大騒ぎです。誰もがこのクリスマスシーズンのパントマイム劇を、心待ちにされていたのでしょう。
物語は、みなさまもよくご存知の『アラジンと魔法のランプ』の童話をベースに、舞台を中国に置き換えて展開されます。

左からGeorge takei:Emperor of China役、Shaun Williamson:Abanazar役、Phil Gallagher:Aladdin役
貧しい洗濯屋の息子アラジン(Aladdin)は、中国皇帝の娘 ジャスミン姫(Princess Jasmine)とお互い惹かれ合っていますが、傲慢な皇帝は、それを快く思っていません。民衆も、皇帝の噂をする際には、警察の取り締まりを恐れ、声をひそめて会話をします。
この皇帝の役を演じられているのが、ジョージ・タケイさんです。とても面白いことに、民衆が皇帝の話をするたびに、出演者が一斉にバルカンサインの手をかざし、『スター・トレック/宇宙大作戦』のテーマ曲を「♪ルールー・ルルルルルー♪」と、口ずさみます。また時折台詞の節々に、「クリンゴンが・・・」といった会話も織り交ざっています。
『スター・トレック』だけでなく『アダムス・ファミリー』や、『ゴースト・バスターズ』、『ストリート・ファイター』などの映画のパロディ、ミュージカル、ダンス、早食い競争や、パイ投げ、早口言葉など、ドタバタ・コメディが満載です。俳優たちと、観客の掛け合い、悪役登場の際の会場からのブーイング。また男性が、太った女性に女装するのもパントマイム劇ならです。アラジンの母親役で男優さんは、度派手な衣装の厚化粧で登場して、物語を面白く盛り上げます。
そしていよいよジョージ・タケイさんが登場する際には、舞台は暗転。夜空に満天の星が輝くなか、『スター・トレック/宇宙大作戦』のオープニング曲が流れ、「Space, the final frontier.(中略)to boldly go where no one has gone before...」と、お馴染みのナレーションと共に、タケイさんが登場します。

左から
Claire Huckle:Princess Jasmine役
厳格な中国皇帝の父に、振り回される娘の役柄でした。丁度私が劇場に着いたとき、楽屋入りするところで、オルトマンさんから紹介されました。
Quinn Patrick:Widow Twankey役
アラジンの母で、未亡人。ど派手な衣装と、厚化粧で笑わせてくれました。
Paul Burling:Wishee Washee役
アラジンの兄。Wishee Washeeとは、"洗濯ゴシゴシ"って感じの意味。タケイさんが最初に登場するシーンの『スター・トレック』のナレーションは、彼がコミカルに担当。
もう本当に何でもアリの状態です。ジョージ・タケイさんの登場に、ひときわ大きな歓声と、拍手が湧き上がります。そしてタケイさんが、スコッティに転送を命じると、舞台は再び中国の街にと戻ります。
ジャスミン姫は、父親である皇帝に、アラジンとの結婚を懇願しますが、頑として聞き入れられず、むしろアラジンは、処刑されそうになります。ジョージ・タケイさんも、豪快に笑ったり、怒ったり、泣いたりと、本当に楽しんでいらっしゃるのがよくわかります。もちろんタケイさんがダンスをし、歌声を響かせる場面もありました。
皇帝の娘との結婚が叶うからと、魔法使い(Abanaza)はアラジンに魔法の指輪を与えて、洞窟に魔法のランプを取りに行かせます。「開けゴマ(Open the sesame!)」お馴染みの呪文と共に洞窟が開き、アラジンは闇の洞窟の中をランプを探してさまよいます。無事にランプを発見したアラジンは、ランプの妖精を呼び出し、富を得ます。

Natalie Cleverley:Genie役
指輪とランプの妖精の二役。彼女の歌う『007/ダイヤモンドは永遠に』の主題歌でもある『Diamonds Are Forever』も、見事でした。
ここで浮かれたアラジンたちは、ウォーターガン(水鉄砲)を手に会場を走り回り、観客に水を浴びせます。もう観客席も大パニックです。オルトマンさんが、予めコートで防ぐようにおっしゃって下さったのですが、それでも私たちの席にはアラジンから「日本からようこそ!」と、特別なウォーター・サービス?がありました。
見違えるように立派な姿のアラジンに、皇帝は娘との結婚を許し、ここでめでたく皇帝の娘と結婚と思いきや、魔法使いがランプを奪い、皇帝とその娘をさらってゆきます。
アラジンは、指輪の妖精の力を借りて、魔法のじゅうたんに乗って彼らの後を追います。このアラジンが魔法のじゅうたんの乗っているシーンの演出も、なかなかお見事でした。
魔法使いを追うアラジンたちは、エジプト文明の遺跡に迷い込みます。ここで彼らの背後に、グルグル包帯のミイラが忍び寄ってくるのですが、そのたびに甲高い子供たちの金切り声が、響き渡ります。これには、さすがのオルトマンさんも、耳をふさいでいらっしゃいました。

ジョージ・タケイさんの楽屋にて、皇帝の豪華な衣装。ブラッド・オルトマンさん提供。
一方魔法使いは、父親の皇帝を人質に、ジャスミン姫に自分と一緒になることを強要します。しかし間一髪で、アラジンたちはランプを取り戻し、魔法使いを赤ん坊に変えます。こうして再び、平和が戻るのです。
ファイナーレの前に、遠方からの来場者の紹介があり、私も日本からのお客様として名前と共に紹介頂き、大きな拍手を頂戴しました。
そしてフィナーレでは、アラジンとジャスミン姫との結婚式で、華麗な衣装に身を包んだ出演者たちが登場。そこでも最も大きな歓声を浴びていたのは、ジョージ・タケイさんでした。本当に最初から最後まで、息もつかせない、楽しいパントマイム劇でした。もし私にもっと英語の理解力があれば、さらに楽しめたことでしょう。

ジョージ・タケイさんの楽屋にて、フィナーレの衣装。ブラッド・オルトマンさん提供。
閉幕後、ブラッド・オルトマンさんの案内で、特別にジョージ・タケイさんの楽屋を訪問させて頂きました。タケイさんは、皇帝の豪華な衣装は、もう身に着けていらっしゃらなかったのですが、お顔は舞台メイクそのままでしたので、ここでそのときに撮影をした写真の紹介は、控えさせて頂きます。歌舞伎役者のような、目鼻立ちがくっきりとしたメイクでした。そして私たちは、半年振りの再会を喜び、お話が尽きることがありませんでした。
今回の舞台のお話もお聞きしましたので、少しだけご紹介させて頂きます。
タケイ:これはパントマイムといって、イギリス中で小さな街でも大きな街でも、このような芝居をしているんです。これはもう300年ほど前から、この季節に子供のいる家族が観に来る、クリスマスの時のお芝居です。
水野:たくさんのお子さんが、ずっとワァワァ・キャアキャアでした。ところでパントマイムというと、このような・・・(宙で壁を触るしぐさ)。
タケイ:そう、言葉を使わない、でもイギリスでは、パントマイムはとても騒々しい、お芝居なんです。
オルトマン:子供たちの金切り声で、頭が痛くなったよ(笑)。
水野:ライトセーバーのようなのを振り回して、それがチカチカして。でもそうやって観客の反応が、直に見れて、お芝居ができるから、すごく面白いかもしれませんね。
タケイ:そうもう若い人でないとできません。主役をしているあのPhil Gallagherという、アラジンの役をした人、あの人のエネルギーは、素晴らしいです。
水野:パントマイム劇では、男の人が女性の役などをされて、それがまた面白いですね。
タケイ:そうそう、それも伝統的なんです。昔シェイクスピアの劇は、女の人は出なかったんです。日本の歌舞伎と同じように。『ロミオとジュリエット』の劇でも、ジュリエットの役は、若い男の子がジュリエットの役をしたんです。でこの300年前に始まったパントマイムは、元々はキリスト教の聖書のお話を、馬車で街から街に芝居をしていったんです。最初の馬車で第一幕。次の馬車で第二幕。そして第三幕と。もともとは、聖書のお話だったのですが、200年ほど前にイギリスでミュージカルが、流行ったので、聖書のお話にミュージカルの歌や、踊りを取り込んだんですね。それがだんだん人気のある劇を巻き込んで、そして現在はこのようになりました。
水野:今回のパントマイム劇のオファーは、いつごろ、どのようなキッカケだったのですか?
タケイ:僕が今回劇に出演したのは、イギリスでも『スター・トレック』と『HEROES/ヒーローズ』がとても人気があるからですが、去年(2008年)『I'M A CELEBRITY... GET ME OUT OF HERE!』というイギリスの番組(オーストラリアのジャングルでの、有名人達によるサバイバルゲームのショー)に出演して、また僕の人気が上がったのです。で、その時に優勝したJoe Swashと僕が、とてもいい友人になって、その人が僕を推薦してくれたんですね。Joe Swashもこの劇場で、去年パントマイムをしたんです。で、制作者に「次は是非ジョージ・タケイを」ってお願いしてくれたらしいです。それでオファーが来たんです。
水野:タケイさんは、いつも新しい分野に挑戦されていますが、パントマイム劇については、どのようにお考えですか?
タケイ:パントマイムでは、ビックリする演技も大きく「ワァーッ!!」。悲しいも「ウワァーン!!」と大げさに演じるのですが、小さい子供たちと役者たちとのやり取りが、パントマイムの伝統的なスタイルになるのです。そういったのは、アメリカも日本でもあまりありません。だから大きく大げさに演じることは、とても面白いです。
水野:そうですね。観ていてタケイさんがとても楽しんで演じていらっしゃるのも、よく分かりました。
このあと当ファンサイトの件と、2010年のお仕事のお話も、少しさせて頂きました。タケイさん、オルトマンさんとのおしゃべりは、本当に楽しく、当初お約束していた時間もいつの間にか過ぎて、次の舞台の準備のための時間も、迫っていました。本当に名残惜しかったのですが、また近いうちにお会いできることを約束し、劇場をあとにしました。
私が実際にジョージ・タケイさんの舞台を観たのは、これが2度目です。最初は、2005年にロサンゼルスのEast West Playersで主演を務められた『エクウス(EQUUS)』。この時タケイさんが演じられたのは、精神科医マーティン・ダイサートの役ですが、現代社会の病巣を突く問題劇で、人間たちの苦悩を描いたものでした。この時私は、語学力の問題もあり、公演を4回観ました。
今回の『アラジン(Aladdin)』は、打って変わって、終始笑いの絶えない楽しい思い出となりました。そしていまなお新たな分野にも果敢に取り組まれるタケイさんのお姿には、敬服するばかりです。
2010年のジョージ・タケイさんのますますのご活躍を、お祈りしたいと思います。